ある日のスタークラフト、1台のジャガーマークIIが整備でご入庫。思わずスタッフ一同、イギリス車の佇まいを感じるのでした。
Photo/Text StarCraft KOBE
整備でご入庫していただいた、ジャガー マークII。
このクルマの存在を知ったのは、伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」でした。ジャガーと発音するのではなく、ジャギュアと発音するのかあ、と免許もない頃思ったものです。
しかも伊丹十三さん「免税」でジャギュアを購入していたので、その頃からイギリスにはツーリストセールスがあったのか!今更感慨深いです。
リフトに載せて整備を進めていくと、ブリティッシュレイランドに統合される前の「ベスト・ジャギュア・サルーン」と呼ばれるにふさわしい部分が数々あります。
まず、インテリア。1960年代のイギリス車、本当にウッドの使い方が上手です。同時期でいうと、ローバーP5や、ヴァンデンプラプリンセス4リッターRなどと同じような様式の中にジャガーらしいセンターメーターが配置されています。しかも、「ウッドに埋もれるように」。シートも小ぶりながら、よく使われる”Cozy and Tidy”(きちんとした、心地よさ)を実現しています。
エクステリアデザインも、ルーフラインからリアにかけて独特の丸みを帯びた形がジャガーのデザインアイデンティティーを表現しています。「佇まいが、いい」と思えるのは、実は小ぶりに見えるからなのかもしれません。このルーフラインとサイドパネルを絞り込んだデザインは、後のSタイプでも踏襲されましたが、やはりあのクルマも小さく見える。しかし、そこにジャガー・サルーンの伝統があるんですね。
エンジンは伝統の直列6気筒エンジン。トルクがあって、大変にいいエンジンです。また、ステアリングのギア比がまぎれもなくジャガーのサルーンらしいゆったりとしたものです。この伝統はX350系までしっかりと受け継がれている、ジャガーの「伝統」そのものです。
ブレーキも4輪ディスクブレーキで、現代でもデイリーユースでは十分な制動力を発揮します。
大切なお客様のお車を整備させていただきながら、そのお国柄に思いを馳せる愉しみ。プラットフォームが共有化しつつある現代では、なかなか味わえないものだと思います。
引き続き、お車のメンテナンスのご依頼をお待ちしております。
ありがとうございました。